経営者列伝 堤 清二
本ブログでは、「経営者列伝シリーズ(?)」の第1弾として、著名な経営者についての考察も機会があるごとに書いていきたい。(故人の方も対象とします)
ただし、筆者が個人的に尊敬する経営者に限定する、という訳ではないことをお断りしておきたい。
あくまで、つとめて客観的に見ての考察を、ということである。
ということで、今回は、セゾングループを一代で築き上げた、堤 清二氏(故人)をとりあげる。
堤 清二氏をとりあげることになったきっかけは、8年前に偶然にも書店で、「セゾン 堤清二が見た未来」(鈴木哲也著 日経BP社)という新刊本を見つけたこと。ちょっと気になってそのまま即買い。(笑)
で、さっそく読んでみた、という訳で。。
セゾングループ自体は、スタートアップではないかも知れないが、その歩みはまさに起業の連続でスタートアップそのもの的でもあり、ぜひ取り上げたいと思う次第なわけであります。
本書より簡単に堤 清二氏の略歴をまとめてみると、、、
・1927年3月東京都出身。
・父・堤 康次郎(実業家・政治家)と母・青山 操との間に生まれる。異母弟に堤 義明氏がいる。
・51年東京大学経済学部卒。当時衆院議長だった父で西武グループ創業者の堤 康次郎氏の秘書を務めた後、54年西武百貨店(現そごう・西武)に入社(27才)し、66年には社長に就任する。
・64年、康次郎氏の死去に伴い、西武百貨店など西武グループの流通部門を事業継承。
・70年に義明氏が率いるグループ本体から独立して西武流通グループ(のちのセゾングループ)を立ち上げた。
・91年、セゾングループの代表を辞任し、経営の一線から退く。
・2013年11月死去(86才)。
ということだ。(一部の情報は他資料より引用)
本書において述べられた堤 清二氏の業績・足跡をごく簡単に記せば、以下のような感じか。。
・ダイエー創業者、中内 功と双璧を成す、戦後の流通業界のカリスマ。
・「生活総合産業」という理想を旨に抱き、積極的な拡大路線をとる。
西武百貨店をはじめ、無印良品、ファミリーマート、パルコ、西友、ロフト、吉野家(再建)などから成るセゾングループを一代で築き上げ、小売業や金融、ホテル、不動産開発などを傘下に持つ企業グループに成長させた。
・一時はグループ企業数約200社、グループ売上高4兆円を超えるコングロマリットを形成させた経営者。
・展開する事業の多彩さにおいてはセゾングループを超えるコングロマリットは日本に存在せず、「生活総合産業」と「脱小売化」を旗印に、かつてはスーパーを軸としたダイエーと並び、日本の二大流通グループとされた。
・老舗の百貨店が手がけない海外の現代美術や前衛演劇といった斬新なコンテンツを西武百貨店やパルコの店舗で紹介し、若い顧客を中心に先進的なイメージを広げ、「セゾン文化」を一世に風靡させる。
西武百貨店をはじめとするセゾングループのブランド化に成功する。
・80年にはグループ会社の西友のPB(プライベートブランド)商品の事業として無印良品を開業し、ノーブランドの無印良品(89年に西友の子会社として良品計画が設立される)が世界的な企業に育つ基礎を作る。
良品計画は、現在では国内外で900店を超えて展開するグローバルな企業へと成長を遂げている。
・88年には世界の約50ヶ国で約100のホテルを運営する巨大チェーンのインターコンチネンタル・ホテルを買収。ホテルの文化性の高さに着目し、セゾングループのアジアを中心とする国際戦略を展開。
投資額は2,000億円を超え、世界のホテル業界で最大級の買収となった。
・91年には、日本(横浜)の地域文化の発信の要として、ヨコハマ・グランド・インターコンチネンタル・ホテルを開業。
セゾングループは、グループ売上高4兆円を超える規模よりもむしろ、消費文化をリードする先進性にその特色を持っていた。
堤 清二が提唱した「ライフスタイルを売る」・「モノからコトへの消費」・「店づくりではなく街づくり」といった方向性は、今でもマーケティングの主軸となる考え方である。
・類まれな構想力と先見性によって、リスクへの配慮よりも、新規事業への挑戦を優先する経営方針を採る。
・セゾングループを通して、物質を超えた真の豊かさを追求する最中、バブル経済の崩壊やグループ企業の不祥事や巨額債務の問題、世界情勢の急変(湾岸戦争)などが原因となり、志半ばで経営の一線から身を引いている。
・逆境をバネに大胆に事業を改革する多様な人材がセゾングループから輩出され、次の世代を担う経営者として育っていったことも、堤 清二の重要な実績・足跡である。
内容はまだまだあるのだが、とても書ききれないのでこのあたりで止めておく。
こんなことをやってきたのか、こんな人がいたのか、と正直驚かされた。
ちなみに、ご存知の方も多いかと思うが、堤 清二は、小説家・詩人でもあり、辻井 喬(つじい たかし)のペンネームでの作家活動による業績も豊富である。
実は、筆者もフォトグラファーとしても活動しているので、分野こそ違えどクリエイターとしても活躍していた堤 清二にはある種の親近感を覚えるところもある。
話しを戻すが、セゾングループとしては財政的にはかなり綱渡りの連続だったようで、政治・経済環境が悪化した結果、グループも解体に向かっていったという残念なかたちになってしまった。
本書から浮かび上がる堤 清二の人物像は、経営者というよりもむしろ一大起業家に近い。どちらかと言えばワンマンに近い経営スタイルだったようで、事業に対する自分の想いを現場で具体化させる人材は積極的に登用していったものの、自身の右腕として経営・財務管理に長けた人材の必要性についてはあまり意識していなかったのかも知れない。
そういう人材が傍にいれば、セゾングループの行方も大分変わっていたかもと考えると、これほどの実績を持つ経営者だけに、ちょっと心が痛む気もする。
本書では、堤 清二を必ずしも成功した経営者と位置づけている訳ではないのだが、それでも、現状を打破する自己否定の精神や、矛盾を感じながらもそれを高い次元へ昇華させるという独自の哲学をもった経営者は、当時はもちろん現在でも他にはいないと言っても過言ではないだろう。
財界人、取引先、政治家、文化・芸術関係など、寸暇を惜しんで人と会い、人と話す時は必ずメモを取るという、謙虚で人に学ぼうとする姿勢と、とてつもない努力量は自分も大いに学びたいし、他の経営者には真似のできないほどのアイデア・決断力・行動力を有した一大起業家的経営者としての価値は、永遠に失われることはないということは間違いない。
皆さんはどう感じるだろうか。
本書は、スタートアップ起業家から大企業の経営者まで、自社の経営へのヒントがぎっしり詰まった事例としての書籍でもあるだろう。
既に書店の棚に並ぶ書籍ではなくなっているが、ぜひ一読して自分なりに解釈してみて欲しい。
では、また。


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